夜にひしぐは神おろし

お芝居とか映画とか好きなものの話を諸々。自分のためのささやかな記録。

音楽活劇『SHIRANAMI』新国立劇場 中劇場、千穐楽

SHIRANAMI、1/29の前楽と千穐楽に行ってきました。観てからずいぶん経っちゃった、という気持ちがあったけど、まだ一週間経ってなかったことにビックリ。しかも初日が1/12だったんだもんね。最近公演期間が長いものに慣らされていたから、短距離走感があるのかもしれない。

初日から「決して手放しで最高だったという気持ちでないのは確か」という感想を残してはいて、「苦手だなー」と思う箇所がいくつかあった。けれど、計4回観る間にちょっとずつ折り合えるようになってきて、最終的に一箇所を残しては愛せるようになったぞ! やったね!

<!-- 読み飛ばしてもらってかまわない不満、ここから >>

本当、最後まで克服できなかった不満だけはちゃんと書き残しておきたいんだけど、1幕最後のシーンが嫌いなのです。今思い出してみても、あそこは好きじゃなかった。表現として言葉足らずに感じるだけなら、まぁしょうがないか、の一言で終われるんだけど。何がきつかったかって、無駄に盛り上がった期待感を宙ぶらりんにされたまま、ぶった切られること。そのせいで、2幕に向けての高まりと集中力に冷水を浴びせられる。冷やされた心のまま幕間を過ごす虚しさよ…。そこから2幕を楽しもうという意欲を自家生成するコストを、観る側が努力して払わないといけないってことじゃん。解せない。まったく解せない。払ったけど。楽しい2幕を観るために、そのコスト頑張って払ったけど。そんなこんなが、1幕ラストを最後まで愛せなかった理由。ライティングやショーに対する不満ではなく、明確に構成への不満。でも、それについては擁護ポイントがあって、あの演出から起こることを予想期待しすぎたからいけない、という事実もあると思うのね。勝手に期待したので。なんか、勝手に期待してすみませんでした。はい、個人的に言っときたかった文句はこれで終わりです。すっきり。

>> 読み飛ばしてくれてありがとう、ここまで -->

ひとつの作品を常にまるごと愛せるわけではないし、いいところとそうでもないところが同居しているほうが普通かなーと思うんですけど(しかもそういう部分についてはなかったことにして語らないことも多い)、そんなこんなひっくるめて「好きだったなぁ!」と晴れやかに言える作品がSHIRANAMI でしたね、私にとっては。

アンサンブルさんにいちばんの拍手を送りたい

SHIRANAMIに私の愛する劇団BRATSの皆さんが出ていることは、初日のログにも書きました。ついつい彼らを中心としたアンサンブルさんに注目してしまう癖があるのですが、まー今回のSHIRANAMI、アンサンブルさんの回し方が半端ねぇ半端ねぇ。

アンサンブルさん全員めちゃくちゃ忙しいでしょあれ! 様々な場面でたくさんの浪人や捕方が出てくるんだけど、そのすべてを入れ替わり立ち替わり演じ分ける段取り。はーすごい。あんなに激しく変えたり動いたりしてるのに、出トチリとかなかったのかしら…。

そうそう、ずっと1階席で観ていたSHIRANAMI、千穐楽は初の2階席から堪能したんですけど、1階席からは見えなかった床のバミリが激しくて驚いた。もはや幾何学模様なのではってくらい、カラフルなテープでバミバミしてあった。バミられすぎて、むしろどれがどれだかわかんないんじゃないの? って思ってしまったよね。

主演の5人がすごいっていう話はきっとあちこちで書かれていると思うので、それ以外のキャストさんのことを話したいなという気持ち!

花組芝居さんの底力

花組芝居という劇団に所属してらっしゃる加納幸和さんと谷山知宏さんがめちゃくちゃよくて、いっぺんにファンになっちゃった! 『メタルマクベス Disc1』に出てらした植本純米さんもすごくよかったし、花組芝居さんの世界観とか底力とか、信頼できるんだなって知りました。新しい「好き」をもらえるのってうれしい。次の花組芝居公演、絶対観に行くぞ。るんるん!

加納さんは孝明天皇、天璋院、老中・小笠原長行を演じ分け。ぼんやり観てたら絶対同じ人だって気付かないレベルで、それぞれの人間を表現していた。どの役にも人間としての懐みたいなものを感じて、芝居の深みってこういうことかーって。とにかく加納さんのシーンの安心感は異常。

谷山さんもいろいろな役をこなしていたけれど、土御門藤子(桃の井)の役がとにかく印象的だった。存在感もたっぷりあって、声が個性的。加納さん演じる天璋院とのやり取りがおかしみたっぷりで最高…。土御門と天璋院のペアは、大奥でのやり合いも楽しかったし、寝所シーンでのダンスの表現も豊かだったし、本当に本当に好き。

劇団BRATSの舞台強さ

もちろん、他の方々もそうなんですけど、私のひいきがBRATSに偏っているので、偏ったまま話をしますけど、まー忙しかっただろうなって。

例えば二幕一場のエゲレス軍艦来襲シーン、あそこで鈴木壮麻さんが艦長に扮していて、左右を乗組員に扮したBRATSの面々が固めている。その直後すぐに、町人に扮して大八車を引いて出てきたりするわけです。出てないシーンを探すほうが難しいのでは??? というくらい、役を変え服を変えカツラを変え出ている。

個人的なベスト萌えポイントは、朝比奈徳之進に扮している熊倉さんが、二幕六場の朝比奈の回想シーンで登場した後、七場の桟橋シーンのはじめには出てこないのに、横浜ホテルへの転換直前に袖から飛び出してくるっていう流れ。そんなところ観てない人には伝わらない選手権として相応しいシーンだと思うんですけど、BRATSファンのフォロワーさんに同意してもらえたので満足です。

横浜ホテルでのショータイムは上手・下手・中央奥に散り散りになって踊っていたので目が足りなかったなぁ。あそこ、今日は絶対に壮麻さんを観るぞって決めた日も、後ろで踊る桃太郎さんが目に入ってきちゃうので、そわそわしてしょうがなかった(笑)。

たくさんの新しい「好き」にありがとう!

まとめとして言いたいことは、たくさんの新しい「好き」に出会わせてくれた異ジャンルコラボ作品として、SHIRANAMIは貴重な存在だったなということ!

さっき書いた花組芝居さんもそうだし、伊礼彼方さんや鈴木壮麻さんが出るミュージカルは観に行ってみようかなって思ったし、宝塚も大階段を一度は観てみたいなって思ったし、あと、失礼ながら喜屋武豊くんがあんなにいい演技するとは知らなくて、めちゃくちゃ好きになりました。

あと、これをきっかけに歌舞伎を観てみたいと思うビギナーが増えて、歌舞伎ビギナーとしておしゃべりできる仲間が増えたらいいなって思ったりもしています。先輩にいろいろ教えてもらうのも楽しいけど、同じタイミングで初めてを共有できるデビュー同期も貴重なので。

現場からは以上です。おつかれさまでした!