『ロミオとジュリエット』本多劇場、初日
宮藤官九郎演出の『ロミオとジュリエット』、初日に行ってきました。ネタバレしない程度の観劇記録を残しておきます。個人的には本多劇場での観劇もとっても久しぶりで、2015年の改修後に中に入るのははじめて! めちゃくちゃ新鮮な気持ちでした。
クドカンロミジュリって、ざっくり、こんなお芝居
ベースはもちろんシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』。細かいことは知らなくても、あらすじくらいは誰でも思い浮かべることができる有名戯曲ですよね。公式サイトに載っている発表当初のクドカンのコメントを引用すると
私ごとですが2年ほど演劇を怠けておりました。
そしてこの後、またしばらく演劇を怠ける予定です。
なんだか後ろめたいなあ。そう感じていたら、「三宅さん主演でロミオとジュリエットをやりませんか?」というイカれた企画が舞い込んだ。
しかもジュリエット役の森川さんは初舞台。これは演劇人として初心に帰れということか・・・。
というわけで、現段階で決めていることは
「なるべくまんまやる!」
とのことなんですけど、まー「なるべくまんまやる!」ってホントかな?(絶対そんなわけないよね…?)なーんて思ってましたよね、観る前は。どのくらいまんまだったのかは、皆さんが実際にご自分の目で観てのお楽しみということで、ここでは言及しないでおきます。
ざっくり感想
ここからも引き続きネタばれにならないよう注意しつつ、ざっくりと感想を書き残します。1ミリも前情報を入れたくない人はお引き返しください。
何がやばいって音楽が向井秀徳
冒頭、向井秀徳脳内再生余裕って思ってたけど、最後恐ろしいほどに向井秀徳だった… っていうかほぼずっと向井秀徳のグルーヴしか感じなかった…
— 夜日布まみと (@yahishigimamito) 2018年11月20日
もうこれですよ、ファーストインプレッションこれに尽きる。音楽担当が向井秀徳なのは公式サイトのキャスト情報にも書いてあるし、ネタバレには当たらないと思うので書くけど、冒頭からいきなり向井秀徳の息吹を感じることになるんだ我々は…。
最後には歌入りで曲が流れるんですけど、一瞬幻聴かなって思う。キサマに伝えたい、俺のこのキモチを。この冷凍都市で現代の琵琶法師向井秀徳のトラックにシェイクスピアが乗るのを目の当たりにした、俺のこのキモチを。キサマに。伝えたい。
完全に向井秀徳ボイスが脳内再生余裕なレベルで、向井秀徳のグルーヴが鳴り響き、そしてそれがこの作品全体のポップでキッチュな雰囲気を終わりまで包み続ける。いやいやいやいや、何度考えてみても、本多劇場が向井秀徳のグルーヴで満たされるって、やっぱり意味わかんなくないですか? おかしいね?
考えるな、感じろ。向井秀徳がシェイクスピアでありシェイクスピアが向井秀徳なのだ。(そんなことはないと思います)
キャラクターがみんなかわいい、とってもかわいい
もーーーー三宅ロミオがかわいくて、カンテツのこと一度も思い出さなかった!! めちゃくちゃロミオだった!!! 16歳の51歳すごい!!!
— 夜日布まみと (@yahishigimamito) 2018年11月20日
三宅弘城さんのロミオがガチのロミオで、はっちゃめちゃにかわいい!! ガチのロミオってなんなんだって話ですけど、想像以上にロミオしてたのでビックリです。これに関してはもうシェイクスピアってすごいなって。シェイクスピアの汎用性、いや失礼、普遍性ってすごいんだなって言うしかない。
皆川猿時さん演じるティボルトのビジュアルがかわいすぎて、猿時さんのためにあるビジュアルだなって思った。猿時さんがバタバタと駆け回ってるだけで場面がおもしろくなるの、本当に不思議。あの人ただ走ってるだけじゃん? なんであんなにおもしろいの? 最高じゃない?
勝地涼くんのマキューシオも下品でキザでキザで下品、勝地くんだから成り立つスイートバカって感じで、絶妙なキャラが楽しかった。田口トモロヲさんの独特の空気感がそのまんま活かされててよかったし、映像作品ではずっと好きだった安藤玉恵さんをはじめて舞台で観られてよかったし、役者さん全員が個性が活きた状態で板に乗ってる感じがしてよかった。
あとは、今野浩喜さんがお芝居に出てるのはじめて観たんだけど、今回のロミジュリの雰囲気にめちゃくちゃ合っててよかった。お笑いで鍛えられてることと役者としての能力は別物だと思うんだけど、それを差し引いて見ても舞台丈夫な人だなって思うので、もっと舞台やってほしいなって思った!
今回本当に真っ向から「シェイクスピア」なので、そのぶん役者さんを活かすクドカンの演出がくっきり見えた感じがして、それがキャラクターの魅力つまり役者さんの魅力として浮き出て感じるのかも。クドカンだから生まれた三宅ロミオ、愛しいなぁ。
ちなみにロビーには三宅ロミオと葵ジュリエットの銅像があります。
パンフレットの対談は必読!
翻訳家である松岡和子先生と演出家である宮藤官九郎の対談がプレシャス・オブ・プレシャス…。作家ではなく、あくまで演出家として、シェイクスピアに造詣が深い松岡先生と対談しているクドカン、グッとくる。なんだろう、なんか関係性がいい〜〜!! ふたりの会話の端々から尊みを感じる〜〜!!
松岡先生のシェイクスピアへの向き合い方とか、クドカンの演出をどんなふうに感じているのかとか、松岡先生に直接聞いてみたいって思うようなことがポンポン書かれている。メタルマクベスのパンフレットにもコラムを寄せている松岡先生だけど、こちらはシェイクスピアの解説が中心なのではなくクドカンの芝居の話題をベースに対談してるというのが熱い。そのコンテンツ性が心にしみじみ刺さる…。
メタルマクベスのおかげでマクベス本とマクベス関連論文は少しずつ集めたり読み進めたりしているところなんだけど、今度はロミジュリの参考文献が控えているとは…恐るべしシェイクスピア、はるか遠いルネサンスからもたらされるだだっ広い沼。なんだろう、沼の油田なのかな? 沼田? 沼田なの? シェイクスピアって沼田なのかーーー。へーーーーー。好き…。
もはや松岡先生にファンレターを書きたいと思うほどの素敵対談。もうどう考えても私は松岡先生のファンなんだと思います。パンフレットに掲載されている対談、心当たりのあるおともだち各位にはぜひ読んでほしいと思っています。
ざっくりまとめ
久しぶりのクドカンの新作お芝居なので、ここまで夢中で書いてきてしまいました…。返す返すも、「なるべくまんまやる!」ロミジュリなのに、クドカンが書いたみたいにクドカンのお芝居になってることにビックリしています。これはもう、ホント。しかも向井秀徳のグルーヴに抱かれている。おかしいね?
今のところ、東京公演の最終ブロックをあと1回だけ観に行く予定なんだけど、実はちょっと心が揺れている。キャストの皆さんが自由にのびのび演じてらっしゃるので、台本にあるのかアドリブなのか全然わからない箇所がいくつかあるんですよ。もしあれが日替わりのアドリブだったら、相当えげつないな、ネタどうやって出すんだろ、ってシーンもありまして(笑)。それを確かめに行きたいなぁって思いはじめたらキリがない(笑)。
あと最後に付け加えるとするなら、本作は2時間10分で休憩なしのお芝居なんですけど、体感値的には1幕ぶんです。(この身体が4時間級の芝居に慣らされすぎているのを実感するのでした…)