夜にひしぐは神おろし

お芝居とか映画とか好きなものの話を諸々。自分のためのささやかな記録。

『罪と罰』シアターコクーン

1月の中旬に、『罪と罰』を観てきました。観てから時間が経っているのですが、観劇記録をできるだけ残すべく、感想とかを思い出して書きます。

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罪と罰ってこんなお芝居

みんな大好きドストエフスキー、中でも『罪と罰』は貧困生活、格差社会、信仰、哲学、愛、などなど、人間にとって普遍的なテーマがごっちゃり詰まった文学作品ですよね。

“正義”のためなら人を殺す権利があると考え、殺人を犯す主人公の青年ラスコリニコフには2 度目のタッグでブリーンから「世界中どこを探しても彼の他には考えられない」と絶大な信頼を得ている三浦春馬を迎え、哲学的な思索、社会に対する反動的な見地と政治思想、宗教感を織り交ぜながら、当時のロシアでの民衆の生活状況を描きつつ、殺人者の倒錯した精神に入り込んだ心理描写など読み応え満載の原作を舞台作品として甦らせます。

罪と罰 | Bunkamura

「シアターコクーンが海外の才能と出会い、新たな視点で挑む演劇シリーズ」であるDISCOVER WORLD THEATREの第5弾とのことなのですが、私はそもそもお芝居で『罪と罰』を観たことがないので(映像作品では何作か観ていますが)、わりとまっさらな目で観ることができました。

役者さん出ずっぱりの演出

役者さんたちが、舞台上にずっといる。暗転とか掃けるとかいう概念がなくて、舞台上にある物の見立てと役者さんの動きが場面転換のすべて。それがすごく新鮮でおもしろかった。音楽を奏でるクラリネット、アコーディオン、チェロの3人も、町の民衆の衣装をまとって舞台上で演奏している。

ところどころ、今そこで動いているメインキャストの動きが登場人物としての心理描写なのか、それとも背景としての民衆に扮したふるまいなのか、あやふやになるような独特な感覚があった。それがまた絶妙な効果で、観ているこちらも視点さえも舞台上に取り込まれていくような錯覚を呼ぶ。

そういう演出の舞台は、私が観たことがないだけで、たぶんたくさんあるのだろうと思うと、似たようなギミックの舞台をもっと観てみたくなる。こうやって舞台にはまっていくのねぇ。しみじみ。

三浦春馬くんの身体表現力

いやー、春馬くんよかった。生で春馬くんの舞台を観るのははじめてだったのだけど、特に1幕での身体表現に凄まじさを感じた。運動量とかアクロバティックな動きとか、そういう活動量としてのすごさではないので、一見地味っちゃ地味な表現力なのだけど。

身体表現力、と言う以外にボキャブラリーを持たないのが歯がゆい。なんと形容すればいいのかな。何度も跳ね上がっては倒れ込む芝居があって、その身体表現コントロールのダイナミックさと繊細さに惚れ惚れした。

舞台ファンの間で三浦春馬くんの評価が高いことは噂に聞いていたのだけど、実際にあの表現力を観て納得した。

ざっくりまとめ

シアターコクーンのDISCOVER WORLD THEATREはまた観たいなぁと思います。